歴史

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8弥勒寺から勝尾寺へ

 六代目の住職である行巡は、知恵にすぐれ徳が高く、加持祈祷の効果は絶大であることで知られた。清和天皇が病気を患った時、病気平癒の祈祷を命じる使者が遣わされたが、行巡は特別な修行中であることを理由に断った。行巡を説得するため、天皇は再度使者を派遣した。使者が行巡に告げる。「そなたの修行場所は、天皇の土地でもある。どうして天皇の命令に従わないのか」。それを聞いた行巡は杖を地に立て、その上に敷物を敷いて座った。使者はそれをみて、「杖の先端が地についているではないか」と迫った。すると行巡は敷物から空中にふわりと浮かび上がった。使者は驚き、急ぎ都に戻り天皇に報告した。
 天皇は、あらためて使者を遣わし、「都に来ずとも、修行の地から祈祷してくれまいか」と行巡に伝えた。使者がそれを伝えると、行巡は袈裟と数珠を都に向けて飛ばした。天皇は枕元に袈裟と数珠があることに気づき拝んでみると、たちまち病気が治った。
 感銘を受けた清和天皇は、行巡に対して、「そなたの力は、王である私の力にも勝るものである。ゆえに「勝王寺」の寺号を授けよう」と伝えた。しかし、行巡は「王」の字を使うことを憚り、代わりに「尾」の字に差し替え、寺号を「勝尾寺」とした。これが勝尾寺の名の由来である。

  • 行巡と使者とのやりとりの様子
    行巡と使者とのやりとりの様子。行巡は杖のうえの敷物に座っている。
  • 行巡を訪ねてきた清和天皇の一行
    行巡を訪ねてきた清和天皇の一行。『日本三代実録』元慶四年(880)の記事には、前年に落飾した清和上皇が勝尾寺に参詣したとある。

画像出典元:勝尾寺所蔵「勝尾寺縁起」
〔貞享元年(1684)〕