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3三神の加護

 大般若経の書写を始める直前、善仲と善算は往生を遂げた。一人残った開成は、あらためて写経の決意を固めた。ところが、紙は用意できたものの、金字で記すための金塊と、墨をするための水がない。開成は天に向かって、それらが手に入るよう祈った。
 七日後の夜、開成は夢の中で容姿の優れた人物と出会い、「写経のための黄金を授けよう」と告げられた。何者かと尋ねると、「八幡大菩薩である」という。目が覚めると、手許に金塊が置かれていた。翌日の夢には夜叉のような者が現れ、「白鷺池の水を汲んできた」と告げる。何者かと尋ねると、「諏訪大明神である」という。目が覚めると、清らかな水が器に満ちていた。
 開成が写経を始めると、こんどは蔵王権現が姿を現し、「そなたの行いを守ってあげよう」と告げた。開成は以上の三神を祀る社を建てた。これが三所権現で、現在の鎮守堂である。

  • 草座に乗って青天に飛翔し世を去った善仲
    草座に乗って青天に飛翔し世を去った善仲。神護景雲2年(768)2月15日の出来事と伝わる。右下には兄を見送る善算の姿も描かれている。
  • 開成の枕元に現れた八幡大菩薩
    開成の枕元に現れた八幡大菩薩。金塊を手にしている。

画像出典元:勝尾寺所蔵「勝尾寺縁起」
〔貞享元年(1684)〕