大般若経の書写を始める直前、善仲と善算は往生を遂げた。一人残った開成は、あらためて写経の決意を固めた。ところが、紙は用意できたものの、金字で記すための金塊と、墨をするための水がない。開成は天に向かって、それらが手に入るよう祈った。
七日後の夜、開成は夢の中で容姿の優れた人物と出会い、「写経のための黄金を授けよう」と告げられた。何者かと尋ねると、「八幡大菩薩である」という。目が覚めると、手許に金塊が置かれていた。翌日の夢には夜叉のような者が現れ、「白鷺池の水を汲んできた」と告げる。何者かと尋ねると、「諏訪大明神である」という。目が覚めると、清らかな水が器に満ちていた。
開成が写経を始めると、こんどは蔵王権現が姿を現し、「そなたの行いを守ってあげよう」と告げた。開成は以上の三神を祀る社を建てた。これが三所権現で、現在の鎮守堂である。
画像出典元:勝尾寺所蔵「勝尾寺縁起」
〔貞享元年(1684)〕