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3三所権現の加護

 大般若経の書写を始める直前、善仲と善算は往生を遂げた。一人残った開成は、あらためて写経の決意を固めた。ところが、紙は用意できたものの、金字で記すための金塊と、墨をするための水がない。開成は天に向かって、それらが手に入るよう祈った。
 七日後の夜、開成は夢の中で容姿の優れた人物と出会い、「写経のための黄金を授けよう」と告げられた。何者かと尋ねると、「八幡大菩薩である」という。目が覚めると、手許に金塊が置かれていた。翌日の夢には夜叉のような者が現れ、「白鷺池の水を汲んできた」と告げる。何者かと尋ねると、「諏訪大明神である」という。目が覚めると、清らかな水が器に満ちていた。
 開成が写経を始めると、こんどは蔵王権現が姿を現し、「そなたの行いを守ってあげよう」と告げた。開成は以上の三神を祀る社を建てた。これが三所権現で、現在の鎮守堂である。

  • 開成・八幡大菩薩・諏訪大明神
    ①床について夢をみる開成。
    ②八幡大菩薩。手に金塊の入った袋を持っている。
    ③諏訪大明神。白鷺池の水を汲んだ水差しを持っている。白鷺池
    は最初の仏教寺院と伝わるインドの竹林精舎にあった池。
  • 蔵王権現の出現とともに一斉に咲いたシャクナゲ
    ①蔵王権現。
    ②蔵王権現の出現とともに一斉に咲いたシャクナゲ。現在行われている勝尾寺のシャクナゲ祭りは、この伝承にちなんだイベントである。

画像出典元:尼崎市立歴史博物館所蔵堀江家旧蔵本
『勝尾寺縁起』